スタジオジブリ制作部門の解散後、他のスタッフと同様に、ぼくもジブリを去りました。ジブリを愛する者として、それは残念なことでした。なぜなら『思い出のマーニー』が完成したあとに、ひとつの思いがあったからです。「機会がある限り、アニメーション映画を作り続けたい」ということでした。 しかし、ジブリという恵まれた環境でしか作ったことのない自分が、まったくのゼロに戻り、そこから一本の映画を完成させることができるだろうか。スタッフもおらず、ましてやスタジオもない、制作費は集まるのだろうか、という不安しかありませんでした。でも、描き続けるしかない。描き続けることが僕の仕事だからです。 ジブリ作品を支えたスタッフだけでなく、アニメーション界最高の才能が集まってくれました。スタジオポノックという新たな現場もできました。僕は高畑勲、宮崎駿両監督の作品にたずさわり、約20年の間、スタジオジブリで過ごしてきました。そこで学び、培った技術と志は僕の宝物です。この宝物を胸に抱き、ここにいる仲間たちと共に、今、新しい作品を全力で作っています。 映画『メアリと魔女の花』は、ドキドキとワクワクに満ちたエンターテインメント作品を目指します。それは一方で、これからの時代を生きていく子どもたち、20世紀の魔法がもはや通じない世界で生きる僕たち自身の物語だと思っています。 夏の公開を、ぜひご期待ください。

2017年4月13日 米林宏昌

この夏、メアリは出会う。驚きと歓び。過ちと運命。そして、小さな勇気に。魔女、ふたたび。

©2017 「メアリと魔女の花」製作委員会